『Wailing With Lou』 BLP 1545
Tracklist
All compositions by Lou Donaldson except as indicated
1."Caravan" (Duke Ellington, Irving Mills, Juan Tizol) - 5:58
2."Old Folks" (Dedette Lee Hill, Willard Robison) - 6:22
3."That Good Old Feeling" - 6:52
4."Move It" - 5:57
5."There Is No Greater Love" (Isham Jones, Marty Symes) - 6:54
6."L.D. Blues" - 5:18
Released:June 1957
Recorded:January 27, 1957
Van Gelder Studio, Hackensack
Genre:Jazz
Length:37:21
Label:Blue Note BLP 1545
Producer:Alfred Lion
Personnel
Lou Donaldson - alto saxophone
Donald Byrd - trumpet
Herman Foster - piano
Peck Morrison - bass
Art Taylor - drums
アルバム・ストーリー
1960年代後半、アルト・サックス奏者ルー・ドナルドソンはブルーノート史に残る大ヒットを放つ。その曲《アリゲー夕ー ・ブーガルー》について、ドナルドソンがぼやく。「俺たちがあの曲をやるのにどれだけ考えたか、想像できるかい? ”ゼロ”。だ。完壁に”ゼロ” だ。あの曲はセッションの息抜きをかねて楽しむためにやっただけだ。まあジャム・セッションみたいなものだ。それが大ヒットした。俺たちがさんざん考え、苦労に苦労をかさねてレコーディングした曲はまったく”ヒット”のヒの字もなかったというのにだ!」
《アリゲーター・ブーガルー》の10年前、ルー・ドナルドソンはニュージャージー州の片田舎にあるスタジオで”ヒットのヒの字” も望めないようなレコーディングに汗を流していた。おそらくは今回も事前のリハーサルはなかった。ドナルドソンはリハーサルで互いの手の内をみせるよりも本番の一発勝負に賭けることを好む。この日のレコーディング記録は、3曲目からしか残されていない。1曲目と2曲目は、おそらく簡単なリハーサルにあてられた。テープが回された3曲目は、バラードの《星影のステラ》とする記録が残っている。だがそれは4曲目からの本番に備えての軽いウォーミング・アップにすぎない。この日、最初にレコーディングされたのは、ドナルドソン作の軽快なブルース、《ザッド・グッド・オールド・フィーリング》だった。
ドナルドソンは、完壁主義者であるライオンとおよそ相容れないタイプのミュージシャンだった。だがライオンはドナルドソンを容認し、ドナルドソンもまた自身のスタイルを貫く。その背景には、このアルト・サックス奏者が1926年の生まれだったことが大きい。1938年生まれのリー・モーガンのような世代が台頭しつあったなかで30歳を目前にしたドナルドソンはすでに、”ベテラン”だった。そこには旧世代のミュージシャンに対するライオンの敬意がある。その敬意が、このアルト・サックス奏者に「悪意のない誤解」 を抱かせる、おそらくは要因だった(「1537」参照〉。
《キャラヴアン》では、「簡単なリハーサル」があったことをうかがわせるドラムスとのデユエットが随所に聴かれる。”ベテラン”が若手ドナルド・バードを使い切る。
0 コメント: