2015年12月22日火曜日

『Detroit – New York Junction』BLP 1513















Track list
All compositions by Thad Jones except as indicated
1."Blue Room" (Lorenz Hart, Richard Rodgers) - 6:48
2."Tariff"- 5:32
3."Little Girl Blue" (Hart, Rodgers) - 2:52
4."Scratch" - 10:32
5."Zec" - 8:46

Recorded at Audio-Video Studios in New York City on March 13, 1956
Personnel
Thad Jones - trumpet
Billy Mitchell - tenor saxophone (tracks 1, 2, 4 & 5)
Tommy Flanagan - piano (tracks 1, 2,4 & 5)
Kenny Burrell - guitar
Oscar Pettiford - bass
Shadow Wilson - drums (tracks 1, 2, 4 & 5)

Released:1956
Recorded:March 13, 1956
Genre:Jazz
Length:34:30
Label:Blue Note
Producer:Alfred Lion


ブルーノー卜のライヴァル会社プレステイツジ・レコードで働いていたジャズ史家ボブ・ポーターは、両社のちがいを明確に語る。「ブルーノートとプレステイツジのちがいは、2日間のリハーサルだった。すなわち「ぶっつけ本番」であったプレスティッジに対し、ブルーノートは事前にリハーサルを設け、さらにはわずかながらもギャランティを保証した。プレステイツジが例外だったのではない。リハーサルを要求し、それに対してギャラまで支払っていたブルーノートこそが例外だった。

1950年代から生涯の友としてライオンと交流をもったイギリス人プロデューサー、トニー・ホールは語る。「アルフレッドは演奏の総体的な出来を重視した。かりにソロの内容が別のテイクのほうがよかったとしても、それをマスター・テイクの基準にすることはなかった。ソロよりも全体を取った。そして、テーマとアンサンブルが完壁に演奏されることを望んだ。」

つまりは個人技よりもグループ表現とレヴェル。ライオンの哲学はハード・パップの理念と合致する。ブルーノー卜のハード・パップ化は必然だった。ブルーノートの個性、アルフレッド・ライオンの姿勢は、プレステイツジやその他のジャズ・レーベルに無数に転がっているオーソドックスなジャズ・アルバムと同列に置いたときこそ映える。

このサド・ジョーンズのアルバムは、その意味でもっともブルー ノートらしい、ライオンらしい一枚だ。なんの仕掛けもないジャズ。企画性といえば5曲中4曲をサドのオリジナルでかためたこと、それにデトロイトをはじめとするミシガン州出身のミュージシャンを何人か起用、タイトルを”デトロイト・ニューヨーク交差点”とし、ジャケットを交通標識に見立ててデザインしたことくらいだ。

アート・ディレクター、リード・マイルスはいつものように50ドルのギャラでこのジャケットをデザインした。だがブルーノートとライオンの魔法は聴けばたちどころにわかる。「2日間のリハーサル」を経たことによって、このなんの仕掛けもない演奏は「作品」としての香りを放っ。その「香り」こそがプレステイツジその他のジャズ・アルバムに希薄なものだった。


0 コメント: