『Afro-Cuban』 BLP-1535
ホレス・シルヴァーの「1520」における《メッセージ・フロム・ケニア》、ケニー ・バレルの「1523」における《リズモラマ》は、ともに主役であるシルヴァーもバレルも演奏に加わっていない、ドラマーと打楽器奏者のデュエットだ。それはアルバムにおけるアクセントではあるが、決して短くはないその演奏は、たんなる”アクセント”以上の「意図されたもの」を予感させる。
おそらくアルフレッド・ライオンは、エキゾチシズム、熱狂、興奮を求めていた。ある意味では、ジャズ以上に求めていた。のちに「ライオンの狂気」とまで揶揄されることになるリズムや打楽器への傾倒は、すでに先のホレス・シルヴアーのアルバムにおける”アクセント”として顔をのぞかせていた。
録音は1953年11月。ケニー・バレルのアルバムにおけるそれは、3年後の1956年になってもまだ
ライオンの熱が冷めていなかったことを物語る。その間の1955年3月、卜ランペッター、ケニー・ドーハムはライオンの意を受けて書き下ろしたオリジナル3曲をもってレコーディングに臨む。それにジジ・グライスが書いた《パシュアーズ・ドリーム》。メンバーには顔なじみのジャズ・ミュージシャンのみならず、打楽器奏者カルロス・パタート・ヴァルデスとリッチー ・ゴールドパーグが加わる。テーマはジャズとラテンの融合。この分野ではトランペッターのディジー・ガレスピーが先駆だったが、ライオンはたんに陽気なだけのアフロ・キューバン・ジャズを求めてはいなかった。狙いは的中する。
ドーハムが書き下したオリジナルはジャズとラテンを表層的に融合させるにとどまらず、その時点ではまだ生まれていなかった言葉に表される新しい音楽を創造する。のちにそれは”フュージョン”と呼ばれ、このアルバムは30年後、ロンドンを中心に巻き起こるジャズ・ディスコ・ブームの必須アイテムとなる。ここから生まれたものはそれだけではない。『カフェ・ボヘミアのジャズ・メッセンジャーズ』(1507・1508〉で知られる《マイナーズ・ホリデイ》は、このドーハムのレコーディングが初演となる。その『カフェ・ボへミア』とこのレコーディング・メンバーは、ドーハムを筆頭に、モブレー、シルヴァー、ブレイキーが重複する。答えはひとつしかない。
ケニー・ドーハム(tp)
ハンク・モプレー(ts)
セシル・ぺイン(bs)
J.Jジョンソン(tb)
ホレス・シルヴァー(p)
パーシー・ヒース(b)'
オスカー・ペティフォード(b)
アート・ブレイキー(ds)
カルロス・ヴアルテeス(conga)
リッチー・ゴールドパーク(perc)
1 AFRODISIA アフロディジァ
2 LOTUS FLOWER ロータスフラワー
3 MINOR'S HOLlDAY マイナーズホリデイ
4 BASHEER'S DREAM パシュアース' ドリーム
5 K.D.'S MOTlON K.Dズ・モーション
6 THE VILLA ザヴィラ
7 VENITA'S DANCE ヴェニータズ・ダンス
Tracklist
LP, BLP 1535 (1957)
1."Afrodisia" - 5:06
2."Lotus Flower" - 4:17
3."Minor's Holiday" - 4:27
4."Basheer's Dream" (Gigi Gryce) - 5:03
5."K.D.'s Motion" - 5:29
6."La Villa" - 5:24
7."Venita's Dance" - 5:22
Released:End of October 1955
End of May 1957
Recorded:January 30 and March 29, 1955
Van Gelder Studio, Hackensack
Genre:Jazz
Length: 35:08 (1957)
Label:Blue Note
BLP 1535 (1957),
Producer:Alfred Lion
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